転職時の年金の基本〜厚生年金と国民年金の違い
日本の年金制度は「2階建て構造」になっています。1階部分が「国民年金(基礎年金)」で、20歳〜60歳のすべての日本国民が加入義務を持ちます。2階部分が「厚生年金」で、会社員・公務員が加入し、保険料は会社と折半します。
会社員として勤務している間は「厚生年金」に加入し、会社が保険料の半分を負担してくれます。退職して無職になると、厚生年金から脱退して「国民年金(1階部分のみ)」に移行します。自分で全額保険料を支払う必要があり、2026年度の国民年金保険料は月額16,980円です。次の会社に入社すると再び厚生年金に加入します。
転職パターン別〜手続きが必要かどうかの判断
【パターン①:退職と入社が連続している(間に無職期間がない)】この場合、年金の手続きは企業側が行うため自分での手続きは基本不要です。退職した会社が厚生年金の資格喪失手続きを行い、入社した会社が新たに厚生年金の資格取得手続きを行います。
【パターン②:退職してから転職先に入社するまで空白期間がある】退職後14日以内に住んでいる市区町村の役所・役場で「国民年金加入の手続き」を行う必要があります。手続きを怠ると「国民年金未加入期間」が生じ、将来の年金受給額が減る原因になります。また国民年金は強制加入制度のため、未加入期間があっても後から追納することで将来の受給額を回復させることができます。
手続きに必要な書類と期限
退職後の国民年金加入手続きに必要なものは①退職した会社から受け取る「健康保険資格喪失証明書」または「離職票」②本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード+運転免許証など)③印鑑(認印可)の3点です。これらを持って居住地の市区町村窓口で手続きします。
手続きの期限は「退職日の翌日から14日以内」です。この期限を過ぎても手続き自体は可能ですが、期限超過から手続きまでの間の保険料は遡って請求されます(時効2年以内)。手続きが遅れても諦めずに申請することが大切です。なお、マイナポータルを活用したオンライン手続きも一部の自治体で可能になっています。
転職活動中(無職期間)の国民年金保険料が払えない場合
転職活動中に収入が途絶えた場合、月額16,980円(2026年度)の国民年金保険料を支払い続けることが家計に重くのしかかることがあります。しかし「払えないから放置する」は最悪の選択です。未納のままにすると将来の年金受給額が減るだけでなく、2年以上の未納で時効となり追納もできなくなります。
払えない場合の最善策は「国民年金保険料の免除・猶予申請」を行うことです。所得が一定水準以下の場合(退職・失業した場合は特例的に申請できる)、保険料の全額または一部の免除を受けることができます。免除を受けた期間は「ゼロ保険料でも年金受給資格期間にカウントされる」という大きなメリットがあります。
保険料免除・猶予の種類と申請方法
免除・猶予には複数の種類があります。①全額免除(所得が一定以下・失業者向けに特例あり)②4分の3免除③半額免除④4分の1免除⑤学生納付特例(30歳未満の在学中)⑥若年者納付猶予(50歳未満の低所得者)です。失業を理由とした特例免除では、前年の所得基準ではなく「失業した事実」をもって申請できるため、退職直後でも申請しやすいです。
申請は居住地の市区町村窓口または年金事務所で行います。「離職票」または「雇用保険受給資格者証」を持参します。免除が承認されると、保険料を払わなくてよくなりますが、免除期間の年金受給額は満額より少なくなります(全額免除の場合は本来の2分の1)。将来的に収入が安定したら「追納(10年以内)」することで、満額に近い受給額を取り戻すことができます。
配偶者の扶養に入る「第3号被保険者」という選択肢
転職活動中に収入がゼロになる期間、会社員の配偶者(夫または妻)の扶養に入ることで「第3号被保険者」として国民年金に加入できます。この場合、自分で保険料を支払う必要がなく(第2号被保険者(会社員の配偶者)が負担している厚生年金保険料の中に組み込まれている)、年金受給資格期間にもカウントされます。
第3号被保険者になれる条件は「配偶者が会社員・公務員(第2号被保険者)であること」「自分の年収が130万円未満(見込みも含む)であること」です。転職活動期間中に配偶者の扶養に入ることを検討している場合は、配偶者の会社に「被扶養者認定申請」を行う必要があります。転職活動が終わって就職した際は、速やかに第2号被保険者(会社員)に戻る手続きが必要です。
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転職することで将来の年金受給額がどのくらい変化するかを理解しておくことは、長期的な財務設計の観点から重要です。
厚生年金の受給額は「被保険者期間の長さ」×「現役時代の平均報酬額」で決まります。転職で年収が上がれば将来の厚生年金受給額も増え、年収が下がれば受給額も減ります。また転職活動中の国民年金期間は厚生年金の加算部分がなく、その期間の年金受給額への貢献が小さくなります。しかし数ヶ月の空白は生涯受給額への影響は軽微であり、転職でのキャリアアップによる生涯年収の向上の方がはるかに大きな影響を与えます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)〜転職時の手続きと継続方法
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合、転職時に手続きが必要です。転職先が企業型DC(確定拠出年金)を導入している場合は「移換(企業型DCへの資産移管)」、転職先がDCを導入していない場合は「iDeCoの加入種別変更(第1号→第2号など)」の手続きが必要になります。
iDeCoの手続きは複雑なため、転職後の落ち着いたタイミングで国民年金基金連合会・金融機関に問い合わせることをお勧めします。手続きを怠ると「運用指図者」として資産の移動ができない状態になるため、できるだけ早めに対応しましょう。転職から6ヶ月以内に手続きを完了させることが推奨されます。
転職後の社会保険関係の手続き一覧チェックリスト
転職時に必要な社会保険関係の手続きを一覧でまとめます。退職時に行う手続き:①厚生年金の資格喪失(退職した会社が手続き)②健康保険の資格喪失③雇用保険の資格喪失(離職票を受け取る)。退職後・求職中に行う手続き:④国民年金加入(14日以内・役所)または扶養に入る手続き⑤国民健康保険加入(14日以内・役所)または任意継続保険・扶養⑥住民税の納付確認(退職後一括請求になることが多い)⑦確定申告(年度途中の退職の場合、翌年2〜3月)。入社後に行う手続き:⑧厚生年金・健康保険の加入(入社した会社が手続き)⑨iDeCoの種別変更(必要な場合)。
これらの手続きは「やらないと損」ではなく「やらないと不利益が生じる」ものです。特に年金・健康保険の空白期間が生じると将来の受給額・医療費に影響するため、チェックリストを使って漏れのないよう対処しましょう。